雑学コラム

ヘッドホン・イヤホン豆知識 vol.17

ワイヤレスイヤホンを進化させる技術の一つ、高音質コーデックとは

雑学コラム ヘッドホン・イヤホン豆知識 vol.17

ワイヤレスイヤホンの高音質コーデックって何?

2022 March

Bluetoothイヤホンの普及と併せて広まった用語のひとつ「コーデック」。このコラムのvol.5「Bluetoothのコーデックやプロファイルって何?」でもそれを取り上げ、

●SBC:対応必須の基本コーデック
●aptX:より高音質なコーデック
●AAC:iPhoneも対応する高音質コーデック

を紹介しました。

 

記事から1年後の現在、そのときは紹介していなかった「もっと高音質」なコーデックが本格的に普及してきています。

●aptX Adaptive
●LDAC

のふたつです。イヤホンとスマートフォンの両側で対応製品が増えてきたおかげで、その実際の効果を体感できるようになってきました。例えばJVC完全ワイヤレスのハイエンドにしてウッド振動板搭載モデル「HA-FW1000T」もaptX Adaptive対応。aptX Adaptive対応スマホとの組み合わせでは、従来のコーデックでの接続時よりもさらに高いポテンシャルを発揮できます。

 

ではその「もっと高音質」なコーデックは、どのようにしてその高音質を実現しているのでしょう?

 

その大きなところとしては、

★ハイレゾ対応
★ハイビットレート&可変ビットレート

の二点です。

 

まず「ハイレゾ対応」ですが、aptX Adaptiveは最大96kHz/24bitオーディオデータのBluetooth伝送に対応しています。この「kHz/bit」というスペックは動画に喩えるなら1秒間のコマ数を増やして「解像度/諧調」を向上させるみたいなもの。ハイスペックなほどに情報量が豊かになります。それが従来のコーデックから大きく向上しているのです。

 

サブスクリプション型音楽配信サービスでもハイレゾ楽曲が増えてきましたから、ワイヤレスイヤホンでもその音質をできるだけ損なわずに楽しみたい!という観点からも注目すべきポイントと言えます。

 

ですがより注目すべきは「ハイビットレート&可変ビットレート」の方かもしれません。

 

ビットレートとは、スマートフォンとイヤホンの間で1秒間に送受信されるのデータ量のこと。その速度は「bps」という単位で示されますが、従来のSBCコーデックのそれが最大345kbpsだったのに対して、aptX Adaptiveは279kbps~420kbpsなのです。(kbps=1000bps)

 

最大速度が420kbpsにまで向上した「ハイビットレート」のメリットは、伝送時の圧縮率を減らせること。ビットレートが高くなればそれに比例して圧縮率を減らせ、音声データの圧縮に伴う音質ロスを減らせます。またデータ容量の大きいハイレゾへの対応にはハイビットレートという土台が必須ですから、ハイレゾ対応もハイビットレートあってこそです。

 

もうひとつの要素、279kbps~420kbpsという「可変ビットレート」は、伝送するコンテンツの種類や周囲の電波状況などに合わせて、ビットレートを280kbps~420kbpsの範囲で自動変更する機能。例えば「電車内などでBluetoothの電波状況が悪いときは音が途切れないことを優先して低ビットレートで動作、自宅などで電波状況がよいときには最大ビットレートで音質アップ!」のような調整が自動で行われます。

 

ハイビットレートで高音質! といっても音切ればかりじゃ実用性がないですよね? 様々な状況に適応してその時々でのベストな音質を提供してくれる可変ビットレート対応の最新コーデックは、「より実用的な高音質コーデック」です。aptX Adaptiveの「Adaptive」はまさに「適応」という意味ですしね。

 

なおaptX Adaptiveは加えて「自動的にローレイテンシー(低遅延)」な動作モードになる機能も備えており、「動画やゲームのアプリを動かしているときは高音質よりも低遅延を優先して動作」というさらなる適応力も見せてくれます。

 

最新世代の高音質コーデックは、当然これまでのものより高音質になっていますが、しかしそれだけのものではありません。その高音質と接続安定性や低遅延を兼ね備え、ワイヤレスイヤホンでのリスニング体験全般を向上させてくれるものなのです。

 

  • Qualcommは米国および他の国々で登録されたQualcomm Incorporatedの商標です。aptXは米国および他の国々で登録されたQualcomm Technologies International, Ltd.の商標です。
  • LDACおよびLDACロゴはソニー株式会社の商標です。

Profile


高橋敦
Takahashi Atsushi
趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。
趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。


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