雑学コラム

ヘッドホン・イヤホン豆知識 vol.8

完全ワイヤレスイヤホンの「左右同時伝送」って何?

雑学コラム ヘッドホン・イヤホン豆知識 vol.8

完全ワイヤレスイヤホンの「左右同時伝送」って何?

2021 June

完全ワイヤレスイヤホンについて「左右同時伝送方式を採用」というスペックをよく見かけるようになりましたよね。それって具体的にはどういう機能でどのような長所があるのでしょう?

 

左右同時伝送の機能は文字通り「スマートフォン等からの音声信号をBluetoothで“左右”のイヤホンそれぞれに“同時”にワイヤレス“伝送”する」というものです。

 

でもそう言われても「それって当然のことじゃないの? だって左右の音声信号を左右のイヤホンに伝送しないとステレオで音楽聴けないよね?」と疑問を覚えたのでは?

 

もちろん、左右同時伝送方式ではない完全ワイヤレスイヤホンも左右の音声信号を左右のイヤホンに伝送しています。ですが左右「同時」には伝送していないのです。

 

従来一般的であった伝送方法はいわば「リレー方式」でした。スマートフォンから左のイヤホンへ、そして左のイヤホンから右のイヤホンへというように、音声信号のデータを順番に受け渡していたのです。


従来のリレー方式(Qualcomm社公式サイトより)


というのもBluetoothの仕組みでは基本的には、1つのスマートフォンに左右2つのイヤホンを同時には接続できませんでした。その制限の中で完全ワイヤレスを実現するためにと、考え出されたのがリレー方式というわけです。

 

しかし黎明期のリレー方式には「リレー」故の難しい点もありました。

それは、左右同時伝送方式に比べると接続安定性の確保が難しかったこと。左右リレー伝送では「頭部」をうまく回り込んで接続を維持し続ける必要があり、この難しい接続を克服するために様々な工夫が凝らされました。

 

他にも、スマートフォンからの受信と逆耳側イヤホンへの送信の両方を担当するメイン側イヤホンの仕事量が多くなり、メイン側のバッテリーだけが早めに減りがち。リレーの終点側のイヤホンに再生タイミングを合わせざるを得ないので、全体的な音声遅延が大きくなって動画の音ズレなどが気になりやすいなども、リレー方式の弱点です。

 

対して「左右同時伝送」方式で、スマートフォンと左イヤホン、スマートフォンと右イヤホンをそれぞれ直通伝送にすれば、そのような問題は起きません。頭を挟んだ回り道が必要ないので音切れは起きにくくなり、左右のバッテリー消費の偏りも、全体的な音声遅延も低減されます。リレー方式の弱点をまとめて解決!です。


左右同時伝送技術のひとつ「TrueWireless Stereo Plus」(Qualcomm社公式サイトより)


でもそもそも、「Bluetoothでは1つのスマートフォンに左右2つのイヤホンを同時には接続できない」という理由でリレー方式が考案されたんですよね? なのにどうして後になって左右同時伝送を実現できたのでしょう?

 

実は左右同時伝送方式にはいくつかの種類があって、その種類ごとにその問題のクリア方法は少し違います。詳細が明かされていない方式もあるので、ここでは「いろんなメーカーががんばった!」ということでお許しを。新しいアイテムなので技術面での大きな進化が次々と起きることも完全ワイヤレスイヤホンの面白さです。

 

進化といえば実は、リレー方式も進化しているんですよ? 完全ワイヤレスイヤホンの登場からある程度の期間を経て、例えばイヤホンに内蔵するアンテナの形や配置など、設計の最適化ノウハウが蓄積されてきています。それによってリレー方式のままでも、例えば左右接続の安定性も、初期の完全ワイヤレスイヤホンとは比べ物にならないほど高まっているのです。

 

ですので完全ワイヤレスイヤホンの伝送方式について2021年時点では、

 

「ハイエンドモデルを中心に普及が進んでいる左右同時伝送方式は安定性が高くて低遅延でバッテリーにも優しい!」

「だけどリレー方式採用のエントリーモデルも以前のリレー方式採用モデルよりずっと高性能!」

 

といったように理解しておけば、間違いの少ない製品選びの助けになるかと思います。



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