ロックスターの横顔 vol.11

ロジャー・テイラー

クイーンの中で一番モテたのは? MUSIC LIFE CLUB Presents

ロックスターの横顔 vol.11 ロジャー・テイラー

クイーンの中で一番モテたのは?

2021.October


ロジャー・テイラーは文句なくモテた。これに異論を唱える人はいないだろう。今でこそ、さすがに年齢を感じさせはするが、バンド全盛期の彼は多くの女性ファンにとって、まさにアイドルだった。ブロンドの髪にスレンダーな身体、茶目っ気のある大きな青い瞳、はきはきとした物言い、運動神経も抜群。そうそう、’70年代当時に人気のあったバンド、ブロンディのデボラ・ハリーとロジャーがパーティーでキスしている写真をMLに載せたことがあるが、これが編集部の予想以上に読者からの反響が大きかった。キスの現場写真なんて、当時の日本の10代の女の子には、かなり刺激が強かったのかもしれない。それもロジャーだなんて……ひ、ひどい!(泣)というわけだ。

 

昨年の来日公演に伴って開催された「クイーン展」の前に、彼と電話インタビューで話した時、’75年の初来日での熱狂的な騒動の思い出話になった。私が「メンバーのなかで一番、モテたのは貴方よね?」と言うと「アッハッハッハ! いやいや、それは自分では何とも言えないな。さすがに今は、制服姿の女学生に追いかけられるなんてことはなくなったよ」なんて笑っていたが内心、まんざらでもなさそうだった。


写真は1976年、再来日時の羽田空港での写真。日本に来るたびクイーンは多くのファンに出迎えられた。中でもロジャーに対する女性ファンの熱狂ぶりは別格だった。


初めてクイーンのプロモーション用のモノクロの写真を見た時のことは良く覚えている。多分、私だけでなく、おそらく誰もが思ったに違いない。「へえ~、このブロンドのヴォーカリスト、ハンサムね」と……。そう、当時、その写真には何の注釈もなく、ただメンバー4人が写っていただけだったのだ。‘70年代当初、新人バンドの情報は、そう多くはなかった。海外のレコード会社から送られて来た1枚のモノクロ写真を見ながらメンバーの担当を最初は、あれこれ想像するしかなかったのだ。

 

ブロンドでオメメぱっちり、実に華のある印象のこの人はヴォーカルだろうと思うのは当たり前のことだった。そんなわけでヴォーカリスト、ギタリスト、ベーシスト or ドラマーまでは想像出来たのだが、最後まで分からなかったのが1人だけいた。そう、後にそれがヴォーカルのフレディ・マーキュリーで、私達がヴォーカリストだと思っていたのは、ドラマーのロジャー・テイラーだと判明する。思えば、実に悠長な時代ではあった。

 

何度も言うが、ロジャーはモテた。子供の頃からモテた分、かなりのプレイボーイでもあったらしく、日本の中学生にあたる年齢になると自宅の居間でガールフレンドとデートを楽しみ、一方、ガレージにもうひとり別のガールフレンドを待たせていたという武勇伝(?)の持ち主だったらしい。こんなエピソードを聞いても嫌味に感じないのは、彼のサッパリとした性格によるものだろう。映画『ボヘミアン・ラプソディ』でも、メンバーがフレディの自宅を訪れた際、さりげなくフレディの妹をデートに誘おうとする場面があって笑ってしまった。

 

実生活では長らく事実婚状態だったドミニクとの間に2児をもうけ(ごく短期間法律的にも結婚)、2番目の奥さんデボラと再婚して3児に恵まれるが、これも04年に離婚。2011年にロンドンでバンド結成40周年を記念した「クイーン展」が開催された時、久しぶりにロジャーとブライアンに再会する機会があったが、その時ロジャーが連れていた10歳位の可愛い女の子は、現在の奥さんとの間に生まれた末っ子ローラだった。彼女も今は20歳前後に成長しているはずだ。

 

初来日後に『オペラ座の夜』のレコーディングを控えてロンドン郊外の泊施設付きスタジオ「リッジ・ファーム」でリハーサル中のメンバーを取材した時のことは、私の数多いクイーン取材のなかでも特に、思い出深い。



リッジファームでのロジャー、左下はメンバーとML取材陣、右下は現在のリッジ・ファーム


一昨年、この「リッジ・ファーム」をクイーン・ファンと共に再訪する機会があった。旅行会社が企画したクイーンゆかりの地を巡るツアーだったが、ありがたいことに私の予想を遥かに超える100人超の皆さんに集まっていただき驚いた。さらに、もっと驚いたことに先代オーナーから経営を引き継いだ現在のオーナーが、その昔、日本の雑誌、つまり私がクイーンの取材でスタジオを訪れていたことを覚えていると言うではないか!! 

 

古くからのファンならML誌上で写真を見たことがあるだろう。ロジャーが軽やかにテニスに興じていたテニスコートは現在、きれいに再整備され、プールは埋立てられて今は、そこにパーティー会場が建てられていた。何十年ぶりかで「リッジ・ファーム」の中庭に立った私は、まるでタイムスリップしたかのような不思議な気持ちだった。

vol.11の内容につきまして、クイーン・ファンの皆さんに間違った情報をお伝えしてしまい大変申し訳ございませんでした。
ここにお詫びして訂正させていただきます。        

                                                2021年12月3日

(東郷かおる子)


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東郷 かおる子 Kaoruko TŌGŌ 音楽専門誌「ミュージック・ライフ」元編集長。
神奈川県横浜市出身。星加ルミ子氏に憧れ、高校卒業後、(株)新興楽譜出版社(現・シンコーミュージック・エンタテイメント)に入社。

1979年に編集長に就任。1990年に退社。現在はフリーランスの音楽ライターとして活動。近著に「クイーンと過ごした輝ける日々」(シンコー・ミュージック刊)。



東郷かおる子さんが編集長だった『ミュージック・ライフ』は『MUSIC LIFE CLUB』と姿を変え、クイーンを中心とした往年の洋楽アーティスト/グループのニュースや情報をお伝えするサイトとして、シンコー・ミュージックが完全に無料のサービスとして運営中。


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