医用モニターとは?

一般的なPCモニターとの違いと求められる性能

 

なぜ一般的なPCモニターで読影すべきではないのでしょうか。医療の現場で使用されるモニターに必要とされる性能や特長を解説します。

医療現場で使用される「医用画像表示用モニター」とは?
一般的なPCモニターを使用すべきでない理由と性能の違い

一般に"医療用モニター(ディスプレイ)"や"読影用モニター"などと呼ばれることが多い「医用画像表示用モニター」(以下、医用モニターと略)ですが、一般的なPCモニターとの違いは何なのでしょうか。

また、医用モニターの中にも機種やラインアップが複数ありますが、その違いは何なのでしょうか。

一般的なPCモニターを使用すべきでない理由や性能の違い、各医用モニターの特長を解説します。

目次

  1. 医用モニターと一般的なPCモニターの違い
  2. 医用モニターに求められる性能
    1. ①用途に適した解像度
    2. ②安定した輝度表示
    3. ③滑らかな階調表示
    4. ④DICOM GSDFに準拠したグレースケール階調
    5. ⑤表示性能を維持するための精度管理
    6. ⑥その他の環境
  3. まとめ

1. 医用モニターと一般的なPCモニターの違い

この2つの主な違いは、医用モニターには「高い表示性能」・表示品質の維持・管理(=精度管理)が求められるという点です。

これらが適切でないと、同じ画像データでも表示するモニターによって見え方が異なる、といった現象が起き、診断への影響や医療の質低下につながりかねないからです。

■高い表示性能

医療現場で使用される医用モニターは、読影や診断の精度に影響が出る可能性がある為、一般的なPCモニターと比較し、高い表示性能が要求されます。

具体的には、必要とされる「解像度」・「輝度」・「階調特性」が一般的なPCモニターとは異なり、各モダリティ(アンギオ、CT/MRI、CR/DR、マンモグラフィ、超音波、内視鏡など)や用途(読影用・参照用)に適した「解像度」・「輝度」・「階調特性」に対応することが重要です。

・同じ画像データを、「解像度」・「輝度」・「階調特性」が適切な医用モニターとそうでない一般的なPCモニターで表示した場合

→一般的なPCモニターは、医用画像が縮小されて表示されてしまうため画像の欠落が起きる。また、輝度や階調が異なるため見づらくなる。


■表示品質の維持・管理(=精度管理)

導入・設置時に適切な要件を満たしているモニターでも、経年劣化によって表示性能が劣化しないように、導入・設置後もキャリブレーション等の適切な管理・整備を実施し、表示品質の維持・管理を行うこと(=精度管理)が重要です。

しかし、一般的なPCモニターは精度管理を行うための機能が備わっていません。

・精度管理を怠ると…購入時(導入・設置時)は見えていたものが数年後には見えなくなっている危険性×


・きっちり精度管理していると、数年後も購入時と同じ表示品質を維持できる◎

2. 医用モニターに求められる性能

①用途に適した解像度


マンモグラフィ、CT/MRI、CR/DR、超音波、アンギオ、内視鏡、手術画像など、医用画像表示に要求される解像度はモダリティや用途(診断用、参照用)によって異なります。

 

一般的には、130万画素から500万画素までの解像度クラスが医用モニターとして使用されます。

CT/MRI、超音波、アンギオなどは130万画素~300万画素のモニターが利用され、CR/DRについては200万画素~300万画素が利用されるケースが多いですが明確な基準はありません。

ただし、じん肺については300万画素以上、マンモグラフィについては500万画素以上のモニターによる診断を推奨しており、詳細については各業界団体のガイドライン※1をご確認いただきたい。

 

※1:「デジタル画像の取り扱いに関するガイドライン3.0版」(公益社団法人日本医学放射線学会)、「ソフトコピー施設画像評価の必須事項」(日本乳がん検診精度管理中央機構)

JVCは、130万画素から500万画素はもちろん、医師の作業効率向上を考慮し開発された600万画素、800万画素、1200万画素のワイドモニターを含む豊富なラインアップをご用意しています。

■最新モニターラインアップ

モノクロ 2MP MS-S200
3MP MS-S300
5MP MS-S500, MS-S500 Dualstand
カラー 1MP CL-R190
2MP CL-S200, CL-R211, CL-E270
3MP CL-S300, CL-S301
5MP CL-S500, CL-S500 Dualstand
6MP CL-S600
8MP CL-R813
12MP CL-S1200

②安定した輝度表示

輝度が変動するとグレースケール特性も変動する為、輝度が安定しないモニターは医用画像表示に適しません。さらに、モニターを並列使用する場合など比較読影を行うためにも安定した輝度表示は重要です。

 

しかし、一般的にモニターの輝度は、設置環境温度の変化や起動時のドリフト、長期使用による経時劣化などにより大きく変動してしまいます。

 

JVCの医用モニターは、モニター画面上に各種センサーを装備しており、この内のフロントセンサーで常時画面輝度を監視し、輝度データを輝度制御回路へフィードバックすることで、常に安定した輝度での医用画像表示を可能としています(輝度安定化システム)。


■高輝度モニターの優位性

安定した輝度表示性能に加え、マンモグラフィ診断の場合はキャリブレーション推奨輝度が500cd/m2程度、またはそれ以上であることとされています※2

 

※2:「ソフトコピー施設画像評価の必須事項」(日本乳がん検診精度管理中央機構)より

 

さらに当社が実施した評価結果では、モニターの高輝度化は低コントラストの病変を見つける必要があるマンモグラフィ診断における病変部の見え方とイニシャルピックアップ(気づき)の改善につながることが検証されています。

 

White Paper「デジタルマンモグラフィ診断における医用画像表示モニターの高輝度・高コントラストの優位性」


③滑らかな階調表示

医用画像表示では、より微細な陰影やわずかな濃淡差を忠実に再現することが求められます。

しかし、一般的なPCモニターが表示する256階調のグレースケール特性では、階調のつぶれ・飛びなどがあり、適切な医用画像表示ができません。

 

そのため、医用モニターはルックアップテーブル(LUT)と呼ばれる階調を変換するテーブルを持つことで滑らかな階調のグレースケール特性への変換が求められます。

 

これにより、一般的なPCモニターでは提供できないより滑らかで精度の高いグレースケール表示を実現します。


④DICOM GSDFに準拠したグレースケール階調

一般的なPCモニターは、メーカー、型式、個体差、あるいは輝度設定値などによりグレースケール特性(一般的にガンマ特性と言われる)がさまざまで統一されておらず、モニターによって見え方が異なります。

同じ画像データでも表示するモニターによって見え方が異なると、重要所見の見落としなど読影や診断の精度に影響が出てしまう為、医用画像表示には適しません。

 

このため、医用モニターにはDICOM Part14で規定されたグレースケール標準表示関数GSDF(Grayscale Standard Display Function)に準拠した階調での表示と、キャリブレーション機能搭載による経年劣化の階調変化に対する補正が不可欠です。


JVCの医用モニターは、フロントセンサーとモニター精度管理ソフトウェア「QA Medivisor Agent」により、DICOM Part14で規定されたグレースケール標準表示関数GSDFに準拠した階調での表示とキャリブレーションが可能です。これにより、経年変化に影響されることなくDICOM GSDFに準拠したグレースケール階調を再現します。

 

その他、各種ガイドラインに準拠したキャリブレーション/受入試験/不変性試験/DICOM適合性試験などを簡単かつ効率的に実施可能です。


⑤表示性能を維持するための精度管理

医用モニターの導入にあたり、いかに精度の高い画像表示性能を維持・管理していくか(=精度管理)という課題が存在します。

モニターの精度管理を怠り、経年劣化や異常による輝度・階調の変化に気づかず使用を続けていると、見落としや誤診などの事故や医療の質低下につながりかねません。同じ画像データが、表示するモニターによって異なって見えないように、精度管理によって表示性能の一貫性を確保することが重要です。

 

また、精度管理を通じてモニターの輝度劣化の推移を把握することで、モニターの故障・修理対応、寿命や買い替え時期の予測にもつなげることができます。

■精度管理を怠ることによる影響・ヒヤリハット例

  • 片方のモニターだけ黄ばんで見える、暗い
  • 自施設と他施設で異なって見える
  • 病変の見落とし

医用モニターの精度管理の重要性と運用方法について、各国で規格やガイドラインが制定され運用されています。日本では、医用画像の適切な表示品質や安全性の向上を図ることを目的として「医用画像表示モニタの品質管理に関するガイドライン JESRA X-0093*B-2017」(一般社団法人日本画像医療システム工業会(JIRA) )が発行されています。本ガイドラインでは、医用画像表示に関する評価方法(受入試験・不変性試験など)、運用体制(品質管理責任者の選任と業務内容等)が明確化されています。

 

一方で、主に診療放射線技師、放射線科医によって実施されているこれらの精度管理の一連のワークフローはかなり工数のかかるものであるため、人手不足が問題となっている医療現場において、いかに効率的にこの管理・維持作業を実施、継続できるかも課題の一つです。

さらに、近年は遠隔医療や遠隔読影、オンライン診療といったニーズの高まりと普及に向けた取り組みが進んでおり、病院内だけではなく病院内外各所に設定されたモニターの品質管理が求められます。

 

JVCのモニター精度管理ソフトウェア「QA Medivisor Agent」は、簡単なフローで上記のガイドラインに準拠した精度管理と品質維持が可能です。また、ネットワーク品質管理ソフトウェア「PM Medivisor」ネットワーク品質管理クラウドサービス「PM Medivisor Cloud」の導入により、モニターの一元管理とそれによる管理者の作業効率化と負担軽減をサポートします。


⑥その他の環境

医用画像表示は、大量の画像で画像処理を行いながら進めます。近年は、医療機器のみならずAI等の画像診断技術の進歩に伴い、2D画像表示だけでなく、ボリュームレンダリングされた3D画像の表示や解析結果の表示など、モニターに表示する医用画像の種類も増えています。

ストレスを感じずにこれらのオペレーションを進めるためには高速な画像描写環境が必要となります。特に医用画像表示はポートレート(縦型)で表示される場合が多いため、ポートレート表示での高速描画性能が重要です。

 

モニターの高解像度表示に対応し高速でスムーズな描画を実現する専用グラフィックスカードが必要です。

3. まとめ

医用モニターには、一般的なPCモニターにはない性能や精度管理が必要とされています。

 

これらの要求に対し、JVCは 長年培ってきたモニター・テクノロジーで、読影診断の精度向上の追求と製品開発をしてきました。医用モニターから精度管理ソフトウェア、グラフィックスカードに至るまでトータルなご提案が可能です。

医療現場の業務効率化や医師の負担軽減への貢献を目指し、今後も"Creative Innovation for medical fields"をコンセプトに医療従事者のサポートと医療の質向上につながる製品開発に努めます。

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