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音楽の旅

VOL.
20
   井上陽水「ハンサム・ボーイ」 2019.April

井上陽水 / ハンサム・ボーイ
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新元号「令和」には皆さんは馴染んできただろうか。

さて今回は、31年間続いた「平成」が始まった直後に発表されたJ-POPの中から、ヒット曲「少年時代」を含む井上陽水の「ハンサム・ボーイ」をとり上げたい。

井上陽水がデビューしたのは、1972年の3月。以前の芸名「アンドレ・カンドレ」時代を含めれば、今年でデビュー50周年になる。改めていうまでもなく、昭和を代表するJ-POPカテゴリーのひとつ『フォーク』の立役者の一人であり、今日も他の歌手への楽曲提供や、数々のヒット曲を生み出し続ける偉大なシンガーソングライターである。

ちなみに、陽水が出演した日産自動車のTVコマーシャルで“みなさん、お元気ですか?"と問い掛けたバージョンは、1989年当時の昭和天皇の深刻な病状に慮り、後にセリフの音声を消して放送したというエピソードがある。

「ハンサムボーイ」のリリースは、1990年10月21日。すなわち平成2年の発表で、陽水13枚目のオリジナルアルバムとなる。

本作に収録された「最後のニュース」は、第2弾シングルとしてリリース。その詞の内容からして、ひとつの時代の終わりと、新しい時代への細やかな希望を象徴するような時事問題が盛り込まれていることが特色だ。この曲はJNN(TBS)系列の報道番組「筑紫哲也NEWS23」のエンディングテーマとして書き下ろされたもの。第3弾としてシングルカットされた「少年時代」は、同名の東宝映画の主題歌に使われ、ソニーやキリンのTV・CMにも採用された。

井上陽水 / ハンサム・ボーイ

井上陽水の楽曲は、独特の詞の描写と、声が発する“色気と艶"が最大の魅力であり、それをいかに再現するか、歌唱の滑らかさや濃密さをいかに素直に描写できるかというのが肝だ。CLASS-Sでそうした表現力を備えて いるヘッドホンとして、私は“WOOD 01”「HA-SW01」を真っ先に挙げたい。

独自開発のウッドドーム振動板。それが織り成す、しなやかでセンシティブな再現力が、陽水の詞の世界のデリケートなディテイルを繊細に再現してくれることだろう。独自の薄膜加工技術によって実現した40mm径のそれは、1T(テスラ)超の磁束密度を有した磁器回路によって強力に駆動され、リニアリティも申し分ない。

また、この振動板の後ろ側には、リング状に加工されたウッドプレートがあり、これがユニット内部の不要振動や反射音を吸収、拡散させる役割を担っている。さらにハウジング部にも木質系素材を使うことで、心地よい響き、すなわち艶を得ているのである。

循環コードで構成されるバラード曲「最後のニュース」は、フレーズ毎に問い掛けるような歌詞がなんだかとても切ない。アコースティックギターとキーボード、ドラムの伴奏がシンプルなだけに、その詞が描き出す世界観が無限に広がっていくようだ。「HA-SW01」が その音場感をよりワイドに押し広げて、一層濃密なムードが醸し出す。

「少年時代」は、ローティーンの頃の夏の思い出を綴ったような歌詞が実に素敵で、ファンタジックな伴奏とも相まって、昭和の時代の懐かしい一コマが脳裏に蘇ってきそうだ。陽水の声に付加された美しいリヴァーブが豊かな広がりを感じさせ、それがまた郷愁感をより深く誘う。ストリングスとピアノの伴奏も、透明で立体的な情景を浮かび上がらせ、聴く人それぞれに色鮮やかな心象を残していくのである。「HA-SW01」がそのサポートをさり気なくしてくれるような按配だ。

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