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音楽の旅


vol.22
   サンタナ「ロータスの伝説」 2019.August

サンタナ / ロータスの伝説

今年も記録破りの猛暑が続いているが、こんな時に聴く音楽は、清涼感たっぷりのボサノバや、透明感に満ちた北欧系クラシックかな…。そんなクールダウン向きの音楽もいいが、私はギンギンのラテンロックを選びたい。それもホットなビートのノリノリのヤツだ。そうして思い浮かぶのは、私はサンタナのギターである。

今回はサンタナの伝説的な来日公演「ロータスの伝説<完全版>」のハイレゾ音源を、最新のフラグシップイヤホンHA-FW10000で聴いてみたい。

「ロータスの伝説」は、1974年リリースのLP3枚組(当時)のライヴアルバムで、73年7月に行なわれた大阪厚生年金会館での来日公演を収録したもの。横尾忠則による22面ジャケットも当時たいへん話題となった。

キーボード2人、2人のパーカッショニスト、ドラムスを従えた総勢8人による演奏は、 ボーカリストやキーボーディストだけでなく、サンタナ自身も打楽器を操るなど、実にカラフルで熱い演奏となっている。即興演奏的な要素も絡み、聴衆の熱狂的な反応(拍手や歓声)からも、この2時間を超えるライヴがい かに凄まじいものだったかが音源から克明に感じ取ることができる。それを今回、HA-FW10000で存分に聴こうというわけだ。

サンタナ / ロータスの伝説

HA-FW10000はJVCが推し進めてきたヘッドホンの振動板に木を採用した『WOODシリーズ』の誕生10周年記念モデルとしてビクターブランドから発売されたフラッグシップモデルだ

このモデルにはこれまで培ってきた数々のテクノロジーとノウハウが注ぎ込まれている。例えば新開発のウッドドームドライバーユニットは、独自の薄膜加工技術によってカバ材から薄く削り出した50ミクロンのウッドドームを、カーボンコーティングを施したPET振動板に組合せている。こうすることで、自然な響きとしなやかな動き、高い強度を両立させている。また、ハウジングからMMCX端子部を分離した構造は、ハウジングの設計に自由をもたらし、徹底した音質の追求を可能とした。

ラテンロックに限らず、ラテンミュージックの肝はリズムである。それを少しも濁らせることなく、立ち上がり鋭く明瞭に繰り出すには、振動板のレスポンスと響きの自然さはもちろん、ハウジングその他に至る部分の制振コントロールが大事だ。金属と木質系素材、さらにはそこに漆や和紙、絹といった天然素材を組合せ、パフォーマンスをより高処に昇華させるノウハウがあったからこそ、HA-FW10000は発売以来、多くの耳の肥えたイヤホン愛好家を唸らせてきたのだ。

静と動が織り成す巧みなコントラストが、「ロータスの伝説」のステージでは再生のひとつの肝となっているが、HA-FW10000はそれを見事に再現してくれる。<果てしなき道>から初期の大ヒット曲<ブラック・マジック・ウーマン>への流れがまさにそんな印象で、これから熱い演奏が繰り広げられることをジワジワと伝えてくれる。ワウワウ・ペダルを駆使したサンタナのギターの鋭利な響きとサスティーンの伸びは圧巻で、HA-FW10000の分解能の高さ、高域のフラットなレスポンスがそこに現われている。

後半の<セイヴァー>から<コンガ・ソロ>へのメドレーは、間違いなく本ライブのクライマックスのひとつだが、その激しいリズムとキーボードのメロディーとが丁丁発止の掛け合いを演じる。リズムのカラフルさ、メロディーの陽気さにつられ、思わず踊りだしたくなる人もきっと多いのではなかろうか。HA-FW10000は、まるで自分がそのステージを目の当たりで体験しているようなリアルな臨場感を味わわせてくれる。

今回はHA-FW10000の生々しいプレゼンス感に改めて聴き入ってしまった。アニバーサリーモデルに相応しい高い完成度と私は思う。

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