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音楽の旅

VOL.
19
   ウェザー・リポート「ヘヴィー・ウェザー」 2019.February

ウェザー・リポート/ヘヴィー・ウェザー
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どの音楽ジャンルにも伝説的なバンドというものが存在するが、ジャズ/フュージョンにおけるそれにウェザー・リポートを挙げて異論を挟む人はいないだろう。70年代初めから80年代半ばに活躍した同バンドにおける黄金期は、希代のベーシスト/ジャコ・パストリアスが在籍した75年から80年頃までといってよい。今回は、バンドとしての音楽性もピークに達していた77年の傑作アルバム「ヘヴィー・ウェザー」を取り上げたい。

ウェザー・リポートは、キーボード/シンセサイザー奏者のジョー・ザヴィヌルと、サキソフォニストのウェイン・ショーターの2人の“マイルス・デイヴィス門下生”が中心となって1971年に結成された。「ヘヴィー・ウェザー」は彼らの7枚目のアルバムで、初回で約50万枚を売り上げるなど、グループ最大のヒット作となる。中でもいまやジャズ/フュージョンのスタンダード曲として多くのカヴァー演奏がある「バードランド」が人気曲だ。アルバムは、米ジャズ専門誌「ダウンビート」において最高評価を獲得。その年の読者投票による「アルバム・オブ・ザ・イヤー」にも選出された。

演奏の特徴は、オーバーダビングを複雑に重ねたシンセサイザーのメロディーと強靭なバックビートを軸に、後半にかけて連続するシンコペーションが壮大。加えて、ジャコのフレットレスベースが繰り出す、独特のピッキング・ハーモニクスのプレイが肝といえる。

ウェザー・リポート/ヘヴィー・ウェザー

では、そうした多重録音による重厚なハーモニーや多彩なリズムを存分に再生するCLASS-Sヘッドホンはどれか。私は“WOOD 01 inner”「HA-FW01」を断然推したい。

その決め手となったのが、不要な振動を巧みに制御し、良質な響きを実現する「クアッドメタルハーモナイザー」と「ウッドスタビライザー」のコンビネーションだ。木目の美しいウッド製ハウジングに収められたステンレス、ブラス(真鍮)、アルミ、ウッド等の各部材が、異種材料の組み合わせによって共振点を分散・吸収し、心地よい響きをもたらしてくれる。ただ単に振動を押さえ付けるのではなく、聴感や測定の繰り返しに基づいて“コントロール”している点がミソだ。さらには、軽量なウッドドーム振動板のポテンシャルを引き出す一助にもなっている。

「バードランド」の冒頭、左チャンネルから繰り出されるオーバーハイム・シンセサイザーのテーマメロディーを「HA-FW01」で再生すると、まさしくヘヴィーな重厚感が味わえる。その後のベースのハーモニクスのトーンがクリアーに伸びているのは、前記の「クワッドメタルハーモナイザー」の恩恵ではないかと思うのだが、いかがだろう。ウェインの力強いサックスのブロウもまた、ハウジングの振動抑制が奏功しているに違いない。

クアッドメタルハーモナイザー

ジャコの奔放なベース・プレイが堪能できる「ティーンタウン」は、高速パッセージによるキーボードとベースのユニゾンが圧巻。ドラムとパーカッションが織り成す力強いビートがそれを煽るように響く。インナーイヤー型イヤホンでここまでクリアーに、しかも深みのある低音が聴けるのは稀。さらに全体の躍動的なリズムには、「HA-FW01」が本領発揮というところだ。

デジタル録音/編集が浸透する以前に、これほど重厚な演奏が人力による多重録音で行なわれていたとは、当時のミュージシャンの力量や、恐るべしである。

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